★JTがこども対象のスポーツ教室に関与することに、西宮市が協力することについて、西宮市に対して抗議しましたが、この教室は2003年3月29日に実施されました。

西宮市教育委員会スポーツ振興課御中

JT女子チームバレーボール教室開催中止の要望

兵庫県喫煙問題研究会                /
会 長  瀬尾 攝(元兵庫県医師会長)      
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副会長 大島 秀夫(元兵庫県保健所長会会長)
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前略

 本会はタバコの害から人々の健康を守るため活動している非営利団体です。2001年7月に結成し、会員数は百余名で、兵庫県内に在住、または勤務する医療関係者・教師・ジャーナリスト・市民を構成員としています。今までの活動としては、1)神戸市長選挙立候補予定者の喫煙対策アンケート、2)甲子園球場観客席禁煙化要望、3)兵庫県内保健施設の喫煙対策アンケート、4)JR西日本車掌休憩室分煙訴訟支援5)尼崎市長選挙候補予定者の喫煙対策アンケートなどを行ってまいりました。詳しくは、本会のホームページをご覧いただければ、幸いです。http://notabako.hp.infoseek.co.jp/
 2003年3月27日の神戸新聞朝刊阪神版に貴委員会が、JT女子チームの児童ら対象のバレーボール教室を開くという内容の記事が載りました。これは未成年者の喫煙予防の観点からたいへん問題が大きいと思います。タバコ会社は、これまで、タバコと健康、タバコとタフさ、かっこよさ、さわやかさを結びつけるためのイメージ戦略として、野球、ゴルフ、テニス、カーレース、バイクレースなどさまざまなスポーツの大会のスポンサーとなってきました。スポーツイベントは、長年タバコの宣伝活動に利用されてきた歴史があります。
 WHOによると、1999年にアメリカの主なタバコメーカーが、アメリカ国内のスポーツイベントに支出した総額は1億1360万ドル(約138億5千万円)という額にのぼります。
 WHOではこのようなタバコ会社の動きを阻止するために、2002年WHO世界禁煙デー(5月31日)のスローガンは、
 “Tobacco Free Sports ― Play it clean”とし、各種スポーツに協力を呼びかけました。サッカーのFIFAワールドカップが禁煙ポリシーで行われたことは、皆さんもご存知と思いますが、バレーボールに関しても、FIVB(国際バレーボール連盟)も、WHO(世界保健機構)の「タバコ フリーイニシアチブ」というキャンペーンに全面的に協力することになりました。
 WHOは、健康を損なうものを販売するための宣伝広告に国際的なスポーツプレーヤーやスポーツイベントを使うなというキャンペーンを行っていて FIVBのアコスタ会長は、「バレーボールは世界中の何百万もの人々に愛されています。私たちは、それらの人々にこのキャンペーンのメッセージを理解してもらうべく、WHOとの力を合わせることが非常に重要であると信じます。」 と述べています。
 参考サイト:FIVB
 http://www.fivb.org/EN/InfoMedia/PressRelease.asp?No=218

 そして、まず手始めに、2002年8月30 日〜 9月15日にドイツで行われた「2002女子世界選手権大会」の会場はタバコの販売もなく禁煙にしました。
 こういう動きの中で、貴市の教育委員会が子供たちをタバコ会社JTの体育館に呼んで、このようなイベントを開くことに協力されるのは、まさに一企業の販売戦略に行政が加担し、子どもたちにタバコに対する抵抗感を薄めさせる非常に問題の多い企画であると私たちは認識しています。
 私たち兵庫県喫煙問題研究会は、貴市がこのバレーボール教室に協力することに反対し、会の中止を要望します。

なお、この件に関するお返事、及びお問い合わせは、
神戸アドベンチスト病院
〒651-1321
神戸市北区有野台8−4−1
電話078-981-0161
ファックス078-981-7986
e-mail pinkpink@msd.biglobe.ne.jp
医師 薗はじめ(兵庫県喫煙問題研究会運営委員)までお願いします。





参考資料「TOBACCO FREE SPORTS-PLAY, IT CLEAN」

2002年世界禁煙デースローガン
http://www.nosmoke-med.org/who2002.html

スポーツはタバコと絶煙しよう−ウソを許すな!タバコ産業は世界中をだましている消費者の二人にひとりを殺す商品があります。これを売り込むにはどうすればよいでしょうか?できるだけ早く、時には9才くらいまでにこの商品に病みつきになって、やめられないようにするには、どのような誘惑作戦が必要でしょうか?この商品がもたらす死と病苦と強烈な依存性を、生命・健康・自由の味わい・明るい人生というニセの衣でうまく隠すにはどうすればよいでしょうか?
 近くの競技場をご覧なさい。好きな選手の身につけているシャツや靴、バッグ、ジャケットをご覧なさい。疑うことを知らないこども達にスポーツの場を通じてタバコを売り込むことをもくろむタバコ産業の内部文書をご覧なさい。この内部文書をタバコ産業の公式発言と比べてみて下さい。彼らの言う事と実際にやっている事はとても違います。
 このようなタバコ産業の迂回作戦にはウソが隠されています。このウソは、病苦と二人にひとりが必ずタバコによって殺されることを覆い隠しています。タバコは人殺しなのです。死んだ消費者を補充するために、タバコ産業は、世界中かけまわって、喫煙者を新たに作り出さなければなりません。そのために彼らは、あらゆるところに手を出します。こども達が集まるなら、どんなさびれた競技場も例外ではありません。
 世界保健機関(WHO)は、タバコを、宣伝とスポンサー活動によって広がる伝染病と表現しています。最も有害なタバコの売り込み作戦が行われているのは、世界中のスタジアムとスポーツアリーナでしょう。
 タバコ産業は、毎年巨額の資金をスポーツイベントのスポンサー活動にそそぎ込んでいます。連邦通商委員会によれば、1999年に米国で、国内の主なタバコ産業がスポーツイベントに支出した金額は、1億1360万ドルにのぼりました。タバコの直接宣伝が法律で禁止されている国々では、スポーツのスポンサー活動費が増えて、宣伝禁止法が空洞化するという皮肉な事が起きています。米国の連邦法ではテレビでのタバコ広告が禁止されていますが、タバコ産業はモータースポーツのスポンサー活動を行う事で、毎年1億5千万ドル以上のテレビ広告に匹敵する宣伝効果を上げていると試算されています。
 タバコ産業は、スポーツのスポンサー活動を慈善活動の見地から行っていると言い張りますが、彼らの内部文書は、そのようには書かれていません。
 RJ・レイノルズ社(現在JTが所有)の1989年のある内部メモはこう述べています:「われわれの商売はスポーツでなくタバコを売る事だ。われわれは、スポーツを利用して、わが社の商品を宣伝するのだ。スポーツイベントの宣伝をすれば、新しい顧客層に入り込む事ができ、イベント中もイベント後も売上を増やし、増収が期待できる」。これは、根拠のないカラ威張りではありません。BAT(British American Tobacco)グループがインドに作った合弁会社が、1996年のインド・クリケットワールドカップのスポンサーとなったとき、インドの10代のこどもの喫煙率が5倍になり、スポーツのすばらしさとタバコを結び付ける誤った考えを持つこどもも激増したという事実があるのです。

 一般市民をだまし、タバコ会社は大もうけ。死と病苦の重荷は、多くの国々にふりかかります。タバコ会社はスポーツ競技場でいくら宣伝費を使えば、何人を喫煙者として獲得できるかを、正確につかんでいます。BATの役員ゴードン・ワトソン氏は、1984年サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙にこう語った:「われわれは無駄な金の使い方はしない。われわれはこれについて徹底的に研究し、自動車レースが、若者の目にこそ、スピーディでエキサイティングでトレンディなスポーツと映るように宣伝を行った。若者こそが、スポーツという市場におけるわれわれのターゲットだった。そして、まもなくこのねらいが正しかった事が証明された」。
 タバコ産業のねらいは当たりました。そして不幸なことですが、タバコ病死が増えるという予想も当たりました。こどもの時からタバコ依存が始まっておよそ20年経った今、現在30才未満の中国の男性の3分の1は、タバコ関連疾患で死亡するだろうという研究結果が発表されました。2020年には全世界で毎年840万人がタバコ病死し、その7割は発展途上国で発生すると推定されています。

全世界の皆様!

 スポーツは人生のよろこびです。近くの公園で行う即席のゲームであろうと、学校・地域のスポーツ大会、国内選手権、ワールドカップあるいはオリンピックであろうと、スポーツは健康な生活、健康な競争と楽しみを私たちに与えてくれます。
 それに対して、タバコは人生によろこびを与えるどころか、病苦と死をもたらします。タバコは世界で現在毎年400万人以上の命を奪っています。2020年には毎年840万人がタバコによって殺されると推定されています。
 プロスポーツ選手がタバコを吸えば、競技能力が落ち、引退が早まるおそれがあります。アマチュア選手やレクリエーションでスポーツをやる一般人がタバコを吸うと、ゲームをする能力が落ちます。スポーツイベントを観戦する人がタバコを吸ったり、受動喫煙すると、病気にかかりやすくなったり、ゲームを楽しむ事が妨げられます。スポーツチームやスポーツ施設が、タバコの広告費やタバコ会社の後援金を受け取る事は、スポーツの命である健康とフェアプレーの精神を台無しにする行為となります。タバコ会社と一緒にスポーツイベントのスポンサーとなっている企業の製品には、「有害企業」の烙印が押されます。つまり、タバコとスポーツは両立しないのです。
 運動選手、スポーツファン、観客の多くは若者です。最近の調査では、未成年喫煙者の3分の1は、10才にならないうちに喫煙を始めています。未成年者の喫煙率は世界の多くのところで増えています。喫煙開始が早ければ早いほど、重いニコチン依存症となります。禁煙する事ができないため、ヘビースモーカーとなり、生きている間中タバコ使用が続きます。このような若者から幾百千万ものタバコ関連疾患死亡者が発生します。
 タバコ会社は、若者をターゲットにしてはいないと言い張りますが、実際は、若者がたくさん見に来る若者に人気の高いスポーツイベントを後援してタバコの広告が会場にあふれるように行動してきました。タバコブランドロゴ入りのジャージ・帽子・スポーツバッグ・Tシャツ・グラウンド・観客席・自動車を見るたびに、タバコとスポーツの持つ強さ・スピード・優雅さ・成功・よろこび・興奮が結びついて印象づけられます。

全世界的対策

 世界中のスポーツ団体とスポーツ選手は、タバコがスポーツの持つ価値や健康と両立しない事を知っています。スポーツ選手は、彼らの持つ強さ、技、献身性、社会全体の手本となるロールモデルとして振る舞う能力がある事に誇りを持っており、タバコがスポーツの理念をネジ曲げている現状を改めたいと思っています。
 世界の多くの国々は、国民の健康を守る権利をその手に取り戻したいと思っています。WHOに加盟する191カ国は、タバコによって死ぬ者を減らすための国際保健条約を作るために話し合いを行っています。科学と経済がタバコ規制のための法律・規則、場合によっては司法的措置とうまく噛み合うよう、タバコ規制に関する国際枠組み条約(FCTC)を締結する予定です。この条約は、国境・文化・世代・社会経済階層などの違いを越えて存在する全地球的な問題、つまりタバコの宣伝活動や密輸などの問題を解決する事をめざしています。事実、FCTCは、国際市場で自由に入手できる商品ならば常識である精査と責任の履行の要求にほかなりません。
 ウソの宣伝とタバコ病死をなくせという国際的な圧力の高まりの前に、タバコ産業は、自分達の企業活動にマイナスになる実効性のある規制をやめさせようと、新たな策動を始めています。使い古された言い訳として、今回、BAT、フィリップ・モリス、JTなどは、「国際タバコ販売促進活動基準International Tobacco Marketing Standards」の施行を約束しています。かれらは、この基準を自主的に実行することとタバコの宣伝を大人の喫煙者に限ることを言明しています。
 WHOは、タバコの宣伝を喫煙成人だけに限定したことによって、こどもたちをタバココマーシャルの洗礼から守る自主規制が成功した試しはないと断言しています。自主規制は、決して成功しません。なぜなら、絶対成功しないように作られているからです。このことはタバコ産業はもちろん、現在では世界中だれでも知っています。

スポーツはタバコと絶煙しよう−ウソを許すな!

 全世界的な行動の呼びかけに応えて、WHOとその共同組織はスポーツからあらゆる形のタバコすなわちタバコ消費、受動喫煙曝露、タバコの宣伝と販売促進活動をなくすためのキャンペーンを始めています。
 米国の疾病予防センター(CDC)、国際オリンピック委員会(IOC)、国際フットボール連盟(FIFA)、国際自動車連盟(FIA)、オリンピックエイドおよび各地のスポーツ組織は、WHOとともに、この「Tobacco Free Sports」キャンペーンに参加することになっています。タバコのないスポーツイベントは、2002年のソルトレークシティ冬季オリンピック、日本と韓国で行われる2002年ワールドカップサッカー大会を始めとして、世界中で開催されます。
 運動選手、スポーツ団体、国立・地方のスポーツ担当官庁、学園・大学のスポーツチーム、スポーツマスメディアならびにスポーツに関心のある者ならだれでも、このTobacco Free Sports キャンペーンに参加しましょう。WHOはすべての人々に呼びかけます。私たちの健康と健康な生活をおくる権利と、こども達をタバコによる死亡や傷害という人災から守る権利を取り返しましょう!
翻訳:松崎道幸(北海道深川市立病院内科)